コロナとマスコミ

マスコミが世論を先導する社会でいいのだろうか

元NHK理事の顧問就任はジャニーズ起用の対価?

ジャニーズ問題について、焦点が「企業が自社の広告にジャニーズタレントを使い続けるかどうか」に移ってマスコミ内の関係者は胸を撫で下ろしている事だろう。しかし、本来ジャニーズタレントは被害者なのだから、彼らの今後の起用の是非が話題の中心になるのは実に珍妙な事である。今日のサンデーモーニングでもジャニーズ問題が何故かウィシュマさんやLGBT、女性活躍の件に結び付けられ「これは人権意識の低い日本社会全体の問題だ」と他人事のように語られていた。問題の本質から必死に焦点をずらそうとするテレビ業界の悪あがきが目に付く。

前回書いたようにこの問題は異常な個人が独力で起こしたものではなく、その個人が巨大な力を持つマスメディアと結託して引き起こした業界全体の腐敗である。だからジャニーズ事務所一つを叩き潰した所で何の解決にも至らないし、社会全体の問題だと言って我々に改善を求められても手の施しようがない。業界の風通しを良くしなければ今後もアイドルの性搾取等、同様の問題が起こり続けるだろう。

ジャニー喜多川氏の意のままにタレントをテレビ出演させ、彼に強権を与え続けてきた当事者が、その事実を認めず「これは日本社会全体の問題」などと言って我々に責任転嫁する異常な状況を改善しなければならない。繰り返しになるが「テレビに出してやるから〇〇しろ」はテレビ局側の協力がないと実現しないのだ。

さて、前置きが長くなったが、業界の癒着を示す分かりやすい事例が見つかったので一つ紹介したい。

NHKドラマ制作の現場でプロデューサー等の要職を歴任し、2018年札幌放送局長時代にはオウム後継団体アレフへの住民インタビュー漏洩事件誤送信問題で譴責処分され、

2020年ついにNHK理事にまで上り詰めた若泉久朗氏だ。参考までにNHK理事の年間報酬額は22,060,000円。

https://www.nhk.or.jp/pr/keiei/kyuyo/pdf/kijyun-top.pdf

若泉氏はNHK理事を退任後、ジャニーズ事務所の顧問に就任した。

NHKのドラマ制作のトップがジャニーズ事務所の顧問になった。

こんなに分かりやすく癒着が疑われる例もなかなかないのではなかろうか。

若泉氏が制作統括として関わった2003年の朝ドラ「てるてる家族」ではジャニーズの錦戸亮が抜擢されている。ドラマの制作統括は一般的には配役の権限を有しているとされる現場のトップである。ただNHKは俳優選考の過程を公開していないから実際に彼が起用を決めたのかどうかは不明である。

しかしいずれにしろテレビ局のドラマ制作の現場にいた、俳優を”選ぶ側”の最高責任者が”選ばれる側”のジャニーズ事務所から仕事を斡旋してもらうのはまずいだろう。

 

NHKはジャニーズを優遇しすぎていると私は感じていた。ドラマで主役に据えたり、紅白の司会をやらせてみたり、解散をニュース速報で流したり。

あのピロンピロンという警報音と共に画面上部に現れるニュース速報に「嵐解散」のテロップが表示された時は本当に開いた口が塞がらなかった。それはニュースなのだろうか、しかも解散は2年後という速報する意味ゼロの情報だ。

ニュース速報は大雨洪水警報とか、そういう切迫度の高い情報を流す場所だろう。こんな無意味な情報を流していたら、本当に重要な場面で注目されなくなってしまう。何故これを速報しようと思ったのか理解できなかった。

それもこれも全部、この若泉氏のように見返りがあるからやった事なんだ、と今回彼の存在を知って得心した。

きっと”選ぶ側”の人々は若泉氏のように仕事を斡旋してもらうだけでなく、普段から贈り物や接待、色々な忖度や接待、あるいは接待、また愉悦に満ちた接待、等様々な特典を”選ばれる側”から受け取っているのだろう。私の疑念は膨らむばかりだ。

誹謗中傷だとNHKは怒るだろうか。ならばNHKは説明しなければならない。

何故歌の上手くない歌手を歌番組に出すのか、何故喋りが達者でないタレントに看板番組の司会をやらせるのか(山ほどいる自社アナを使えば)、何故切迫度の低い芸能人の引退情報をニュース速報で流すのか、何故性加害問題を知りながらジャニーズを起用し続けたのか。

スポンサーからの金に依存する民放と違ってNHKには「人気タレントだから視聴率の為に起用したかった」という言い訳は許されない。受信料収入は法律で守られているからだ。我々に「NHKは見ないから受信料を払わない」という選択は許されていない。彼らが金の心配をせずに番組制作できるよう我々の金が税金のように徴収されている。

NHKには正義や倫理観、番組の質を犠牲にしてまで特定のタレントを起用しなければならない理由はないのだ。

NHKには納得できる説明をして私の懸念を払拭してもらいたい。

 

余談だが、若泉氏は元々は映画を作りたかったそうで、本当は映画会社に入りたかったらしい。当時映画会社は不況で募集がなく「ピンク映画の監督になる」と言ったら父親に殴り飛ばされたそうだ。多分基本的には愉快な人で、付き合いの良さから色々な仕事の話が来るのだと思う。ジャニーズ顧問も金の為というよりは長年の付き合いという側面が強いと推測する。さすがにあれだけ稼いだら金はもういらんだろ。

テレビ業界で上に行ける人なんてのは基本的にはみんな如才なくて楽しい人達ばかりだと思う。私の周りでこの業界に行ったのもクラスの人気者みたいなのが多かった。そうでないと渡り歩けない世界だというのも想像に難くない。

恐ろしいのは、そういう気の良い人達がたとえ無意識的だとしても性加害に加担する構図になっていたこの業界の常識、外部から是正される機会がなかった閉鎖性だ。そしてこれだけの事態になっても未だにこの腐った箱から、自分達が犯した過ちから目を逸らして我々に責任を押し付けようとする醜い声が聞こえてくる現実が輪を掛けて恐ろしい。