コロナとマスコミ

マスコミが世論を先導する社会でいいのだろうか

教員不足報道の怪

過酷な労働環境で教員のなり手がいない、という報道をしょっちゅう聞く。

一時期、その手の記事のコメント欄にも「テストの〇×つけるのが大変です。家に持ち帰ってやってます」などと書き込む教員がたくさんいた。本人的には残業代も出ない大変な仕事をしていて同情がほしいのだろうが「テストの採点が大変」と社会に訴える姿を見て「教員の世界は平和なんだな」と感じた。部活の顧問がサービス残業で不満という主張も、自分が生徒だった頃の準備室で本を読んでいるだけの顧問を思い出して白けた気分になる。彼らの言う長時間労働はきっとあれではないのだろうけど。違うよね?

教員の給料はいくら?平均年収や諸手当、昇給のポイントを紹介 - スタンバイplus+ (プラス)|仕事探しに新たな視点と選択肢をプラスする

平均年収700万は民間平均450万と比べて殊更悪いとも思えない。むしろ良いだろう。これなら成り手がいないはずはないと思う。そう思って採用試験の倍率を見るとやはり応募者は多い。

【2022年最新】教員採用試験の倍率(難易度)や日程・内容について詳しく解説!|資格の学校TAC[タック]

『令和4年度(令和3年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況のポイント(文部科学省資料)』

https://www.mext.go.jp/content/20220909-mxt_kyoikujinzai01-000024926-5.pdf

小学校は2倍程度の所が多いが、中高は人気で5倍以上が当たり前の状況だ。時間外労働の部活顧問が嫌がられているという話はどこへやら。成り手がいないなどと言うから1倍割れしてるのかと思いきや全然そんな事はない。

教員不足とは一体何の事なのだろう。

調べてみると、今後は少子化で子供が少なくなり将来的に教員数も減らす必要があるから、終身雇用になる正規教員の採用を現時点で絞っているそうだ。毎年一定数の教員が定年退職していくわけだから採用を絞れば当然少なくなる。

少子化は今に始まった事ではなく既に子供の数は十年、二十年前より少ない現状だから教員数が減るのは正しいように見える。しかし教員は科目ごとに必要だから、単純に生徒数が100人から10人に減ったからと言って、同じ割合の人員を削減できるわけではない。「生徒10人しかいないから体育教師はいらない」とはならない。人口が減少した地域の学校の統廃合で解決していく問題だろうが、それが進むまでは終身雇用ではない臨時教員を採用して対応していくしかない。しかし収入が不安定な臨時教員は正規教員ほど人気がない。だから慢性的に教員不足に陥っている学校もある。

私が調べた限りではこんな話だ。

教員の待遇が悪くて成り手がいないから不足する、という話ではない。

国の長期的な政策として教員を減らしている。だから不足する。足りない場所は非正規雇用で補っている。その非正規職に人が集まりにくい、という話だ。

教職が本当に忌避されているのなら採用試験に人が集まらない。

採用の倍率を見る限り正規の教職は今もなお、それなりに人気のある職業だ。

教員不足の報道を聞いているだけだと、教員のサービス残業をなくしたり給与を上げたりしなければならないと思ってしまうだろう。別にそれ自体悪い事ではないが、正規教員の給与を上げたり残業代を出したりしても教員不足解消に繋がらない。正規教員は今もなお人気職だから。

改善する必要があるとすれば非正規教員の待遇だろう。

しかし非正規雇用の待遇改善はあまり話題にならないから不思議だ。

 

この前NHK日曜討論を見ていたら、経済対策の回だというのに連合総研の人が唐突に教員の待遇改善の話を始めた。違和感を覚えたが連合の人だから仕方ないのかなと思った。

この問題は議論が表層的なまま、ひたすら教員の給与アップの方向にばく進していて危ういと思う。報道するのなら、待遇改善を求める当事者の声を取り上げるばかりでなく「採用試験倍率高いのにどうして教員不足になるの?」という当たり前の疑問が解消する程度までは掘り下げてほしい。