コロナとマスコミ

マスコミが世論を先導する社会でいいのだろうか

ファクトチェックの限界

ハマスイスラエルの争いで、当初イスラエル軍が病院を爆撃したというニュースがあった。その後、イスラエルの反論などによる事実確認が進み、武装組織によるイスラエル攻撃の誤爆だった、という結論に至ったようである。

事実の確認を待たずに報道した結果、フェイクニュースになってしまったわけである。事実はなかなか確認できないものであるから、一刻を争う報道の世界では時に誤報を出してしまう事もあるだろう。

報道する前に日本ファクトチェックセンターのような中立組織に確認してもらえれば良かったが、彼らは新聞やテレビニュースはチェック対象にしないと宣言しているから(ガイドライン19条1-4)こういう場合は頼りにできない。

どうすれば良かったのだろうか。重大なニュースだから新聞やテレビは報道しないわけにもいかなかったはず。「ハマス勢力圏からの発表によると~」という断り書きを入れて伝えればまだ良かったかもしれない。

いずれにせよ、真偽の確認とは簡単にはいかないものである。

だから私は伝えたい。SNS叩きが加速している昨今、真偽確認の難しさを日々感じているはずの方々に伝えたい。

市民のSNSをあまりいじめないでほしい。力ある大メディアでさえ誤った情報を流してしまう(そして影響が甚大な割に罰もない)のだから、一市民に「事実確認できない情報を発信するな!」と怒らないでほしい。「ファクトチェックするぞ!」と市民を脅さないでほしい。

組織に握り潰される事を恐れた内部告発者が不特定多数の人に知らせたようと匿名でネットに書き込んだ未公開の情報を「ファクトチェックできないから怪しい情報」と片付けてしまって良いのだろうか。告発しようとしている人に「怪情報をSNSで発信したらまずいよな・・・」と思い留まらせてしまって良いのだろうか。

以前はネット掲示板等に自称飲食店従業員が「○○でポテトのフライヤーにゴキブリが飛び込んだ」とか「焼きそばの製麺機にゴキブリが飛び込んで生地に練り込まれた」と証拠もなしに書き込む事がよくあったが、今はああいうのを書き込もうとする人は大分減っただろう。自由に書いて責任も取らずに済む状況はデマを増やすだろうが、ああいう気軽な内部告発も生み出すはず。個人の情報発信に高い倫理観や情報の確度を求める昨今の流れを私は好まない。

新聞社やテレビ局に所属していた人間が、何の後ろ盾もない個人にファクトチェックを迫る様は言論弾圧する権力者の姿に重なって怖いから是非ともやめてほしい。

factcheckcenter.jp