コロナとマスコミ

マスコミが世論を先導する社会でいいのだろうか

市民の警戒心を高める為ならミスリードも、倉原優医師の文章

この記事。

え、今の新型コロナ肺炎は初期のものよりヤバイの?

と受け止めてしまいかねない見出しだが、本文を注意深く読むとコロナの悪性度の話でない事が分かる。

『コロナ禍初期にみられた新型コロナ肺炎は、ただただウイルスが肺内で暴走している現象をみていました。「ウイルス性肺炎」は、肺の中で同時多発的に起こるので、刷毛で塗ったように薄い白色のカゲが肺全体に広がります。そのため、「両肺が真っ白」になる人が多かったのです。オミクロン株以降、ワクチン未接種者を除いて、こういうウイルス性肺炎は減りました。

大切な部分を太字にした。ウイルス性肺炎は減った、と書いてある。ああ、やっぱり毒性は弱まっているんだね。良かった良かった。という話ではないのだろうか?

一体何が『まったく違う』のだろう。読み進めると明らかになる。

『かわりに、高齢者が増えたことによって、新型コロナ陽性の細菌性・誤嚥性肺炎が増えました。誤嚥した細菌・食事が肺の中に転がっていくから、肺の背中側や下側に起こりやすいのです。』

入院患者に高齢者が増えたから高齢者に起こりがちな誤嚥性、細菌性肺炎が増えた、って。

要するにこういう事か。ウイルスが弱毒化して若年層が入院しなくなり、入院する新型コロナ患者は高齢者ばかりになった。ウイルスは弱毒化しているから高齢者でもウイルス性肺炎は起こらない高齢者は元々抵抗力が弱く、細菌性・誤嚥性肺炎を起こしやすい。結果、新型コロナ病床で見られる肺炎はウイルス性が減少し細菌性ばかりという高齢者医療現場で見られるごく一般的な状況になった。

『まったく違う』のは新型コロナの脅威度ではなく医療現場、新型コロナ病床の状況だったのだ。コロナ肺炎どうこうではなく、どちらかと言うと高齢者医療が大変だという内容の記事だった。

この内容に対して『新型コロナ第8波の肺炎は初期とはまったく違う』みたいな題を付けて良いのだろうか。「市民の警戒心を高める為なら少しくらいミスリードしてもいいよね、別に嘘ついてるわけじゃないんだし。」的なノリなのだろうか。

確かに嘘ではないから責められない。

 

大切なのは私達が知る事だ。医師だろうと大学教授だろうとジャーナリストだろうと、社会的地位の高い信頼されている人達だとしても、こういう文章を書く。人は皆自分の信じる正義の為なら不誠実を許容してしまう。それが人間。嘆く事でもない。

そういうもんだと思って読む。聞く。ミスリード記事でも重要な情報はたくさん含まれている。学べる。必要な所だけインプットして煽情的な所は苦笑して流す。

できれば専門家には煽るような記事を書いてほしくはないが、伝える事の難しさを思えば致し方ない側面もあるのかもしれない。情報の受け手である私達が常に「冷めた目」で彼らを見る事ができればバランスの取れた言論社会が実現できるように思う。