少子化は子育て支援不足が原因なのか?
子育て支援、子育て支援と連日テレビで政治家が念仏のように唱えているが、実際のところ国による子育て支援は必要なのだろうか。少子化解消の為というが、少子化の原因は子育てに金が掛かるせい、というのがそもそも正しいのかよく分からない。
昔は子供が5人6人いるのが当たり前というような時代もあったが、あの頃はみんな金持ちだったのだろうか?
いやいや、あの頃は金がなくてもオッケーだった。今は教育に金が掛かるんだ。
という答えも予想はできるが。
教育に金が掛かる主な要因は塾通いと私立校である。
この根底にあるのは先月書いた通り、公立学校が教育機関に求められる本質的な役割を果たしていないという問題である。学校を改革し塾化すれば、学校と塾に両方通うなどという無駄は解消できる。小中学生にかかる教育費を公立校通学の費用以外発生しない状態までは持っていけるはずだ。
だが、仮に教育費の負担がなくなり子供を持つ金銭的な障壁がなくなったとして、それで少子化は解消に向かうのだろうか。
私の直観的には、少子化の問題は細かいお金の話ではなく、社会の常識とか因習とかそういう感覚的な次元の話に思える。子だくさんの有名人が揶揄されているコメントをネットで見ることもあるし、もっとストレートに「子だくさんに嫌悪感」と表明する人もいる。
この「貧乏なのにたくさん子供産むな」という呪いのような空気に縛られている親は結構多いのではないかと思う。本人は子供に習い事させなくても良いと思っているけど「習い事させられないのに3人目産んだ」という周りの目が怖い、とか、私立校に通わせてあげる財力がないけど3人目産んでいいのだろうか、とか。
こういう空気があると「周りの家庭より子供を多く持とう」という意志はなかなか持てないだろう。もちろん現実社会では誰もこんな発言をしないわけだが、暗黙の了解としてこういう空気が今の社会に漂っていて、多くの人がこの価値観に縛られているのではないかと私は考えている。だから子育て支援を手厚くした所で少子化問題は解消しないのではないかと。
少子化問題が政府の責任である方がジャーナリストや一部の政治家にとっては都合が良いから「少子化の原因は政府の子育て支援不足」に異論が挟まれる機会がなかなかない。しかし、ここは一度立ち止まって検証してみても良いと思う。
もっとも、この問題をマスコミが取り上げ続けて、それに押された政府が次々と支援策を実現していく流れから子沢山を忌避する空気が次第に打破されていくという副次的な効果も想像できるから、この流れで良いのかもしれないとも思っている。
まぁでも最近あんまりにも子育て支援の話ばかりなので、子供のいない人々からすれば世間から取り残されてしまったような疎外感を覚える事になり『誰も取り残されない社会』の実現からは遠ざかっている気がする。