コロナとマスコミ

マスコミが世論を先導する社会でいいのだろうか

池上彰氏がペーボ氏に「なぜ日本の科学研究がダメになったのか」を尋ねる怪

先日テレビで池上彰氏がノーベル賞受賞者であるスウェーデン生物学者にインタビューしていた。内容はほとんど覚えていないが「なぜ日本の科学研究が衰退してしまったのか」を質問した場面は笑った。

日本で生まれ育ったわけでもなく日本の大学に所属しているわけでもないのに知るわけないだろう。万が一心当たりがあったとしても他国の批難に繋がりかねない事をわざわざ言うか?一体何を期待して氏はこの質問をしたのか。

多分池上氏自身も端から答えは期待しておらず、日本の文化人によく見られる欧米人を前にしての「日本はこんなにダメなんです」ショーをやりたかっただけなんだろう。

NHKのアナウンサーがジェンダー問題でアイスランド首相にこのショーをした時も思ったが、日本の文化人知識人が「ダメな日本」を手土産に欧米人を接待する様は本当に滑稽だ。

彼らがなぜその「ダメな日本」から自身を切り離しているのか分からない。マスメディアの人々は私達一般市民より社会に対する影響力が格段に大きいというのに。「ダメな日本」になってしまった原因が自分達にあるかも、と少しは考えないのだろうか?

 

日本の科学力が落ちている、基礎研究がおろそかになってしまった原因は、池上氏のようなマスコミの人々が地道な研究とそれに従事する地味な研究者達にスポットライトを当てず「地方を活性化させたい」「貧しい人々を救いたい」「みんなが幸せになれる社会にしたい」というようなでっかいストーリーを語る、威勢のいい者ばかりを持て囃してきたせいではないのか。池上氏は現実にテレビ番組でそういう大学生を取り上げるコーナーを持っている。 

科学者の仕事は、科学という長大な鎖を構成する一つの小さな環を作る事だ。鎖の一つになれれば大成功な人生だ。「社会を変えたい」という野心家の情熱とは違う熱が必要になる。もちろん大きな絵を描けるに越した事はないが必須ではない。鎖の全体像を知らずとも環は作れる。逆に革命家の肥大化した野心が地味なわっか作りで満たされる事はない。

でっかいストーリーを語る学生ばかりをピックアップしながら「なぜ日本の基礎研究はダメになってしまったのか」と嘆くのはやめてほしい。

長い年月マスメディアで仕事をしてきて本を何冊も出版し、世間に対し多大な影響力を行使してきたジャーナリストが日本の現状を他人事のように語る姿はもう見たくない。