前回『陰謀論』の言葉の定義が曖昧である事に言及しウィキペディアを取り上げたが、今回は朝日新聞の記事内で見つかった経済学者の山口真一氏による定義を取り上げる。こちらはwikipediaと違って簡潔で分かりやすい。
『陰謀論の定義は難しいが、おおむね「何らかの出来事について、背後に強力な集団・組織による力が働いているという考え」といえる。』
分かりやすいけどガバガバすぎ。これでいいと思ったのか?良くないと認識しているから「おおむね」付けて濁したのだろうが。テキトーな仕事だ。
何らかの出来事の背後に強力な組織があるのは当然である。
「オリンピック開催の背後に電通の力が働いていた」
これは陰謀論だろうか?電通はオリンピック招致の前面にいた主体ではなく背後にあった組織だから、山口氏の定義に従えば陰謀論だ。実際、事実関係が明るみに出る前に「電通が賄賂で五輪を~」なんて言ってたら陰謀論扱いされたのは想像に難くない。しかし今では単なる事実になってしまった。陰謀論の線引きは一体いつどこで行われるのだろう。
これはどうか?山口氏の定義に従えばこれも陰謀論だ。実際、公に認定された事実だけ見ても安倍氏の関与はないから陰謀論に違いないが、これを陰謀論と言ったら朝日新聞も多分山口さんも怒るだろう。
「加計学園認可の背後に理事長友人である安倍氏の力が働いている」
山口定義に従えば陰謀論。
山口定義に従えば陰謀論。
「伊藤詩織さん暴行事件で加害者のTBS記者山口敬之氏が不起訴になったのは安倍政権の圧力」
これも山口定義に従えば陰謀論。全部陰謀論になるが良いのか?私は一向に構わないが、今『陰謀論』というワードを振りかざして素人を非難している人達は困るだろう。
このように『陰謀論』は実は定義すらまともにされずに濫用されている雑な概念なのだ。立場によって陰謀論になったり正論になったりする。
「君の意見は陰謀論だけど僕の言論は陰謀論じゃないよ」を実現するためには陰謀論の定義をウィキペディアのそれのように複雑に入り組んだ形にするしかない。それですら不十分だろう。
もしあなたが何か発言してそれを陰謀論と咎められたら「陰謀論の定義は?」「モリカケ安倍黒幕説は陰謀論?」と聞いてみればいい。そこで議論は終わるはずだ。
なお私はリンク先の朝日新聞記事に陰謀論として記載されている『コロナワクチンは人口減少をもくろんだものだ』という説を支持しない。私は当ブログ記事で陰謀論というワードが未定義のまま濫用されている事実を指摘したいだけであり個別の真偽について言及する意図はない。