コロナとマスコミ

マスコミが世論を先導する社会でいいのだろうか

「政府がヘマをしなければ新型コロナは抑えられる」のか?

感染者が増えると政府が批判される。これはどうかと思う。なぜならこれまでどこの国も感染者の抑制に成功していないからだ。コロナの感染動向は政治で制御できる範囲にないように見える。少なくとも自由主義国では。

新型コロナの感染力は非常に強く、そして現代自由主義社会では人の行動は完全に制御できない。

 

私達は政府に無理な仕事を要求している。政府はそれに応えようとして暴走する(例、銀行から飲食店に圧力を掛けさせよう)。良くない傾向だ。

私達は国に要求できる現実的な範囲を冷静に見極めなければならない。批判はその上で行うべきだ。
「政府がヘマをしなければ新型コロナは抑えられる」
この前提が正しいかどうかをまず考えなければならない。自由主義のどの先進国も新型コロナを抑えられなかったのになぜ日本だけが抑えられると思うのか。

 

むしろ数字だけ見ればこれまで日本は他国よりずっとましな感染状況だった。ブルームバーグの記事でも国別コロナ対応ランキングで上位に位置づけられていた。そのとき私達は「日本政府はよくやった!すばらしい!」なんて言っただろうか?

今政府批判している人達は「日本が相対的に軽度な被害で済んでいたのは日本政府が優秀だったから」という説明に納得できるだろうか?
できないのだったら感染拡大の原因をすべて政府に押し付けてはいけない。

「抑え込みに失敗したら政府のせい、成功したら私達の努力のおかげ。」

これは大人の世界では通用しない。


批判するならもっと現実的で論理的な批判をしてほしい。医療崩壊が叫ばれ続けた中、どうしていまだに十分なコロナ病床が確保できないのか、とか。医療制度に問題があるのならそれを是正するために法改正の議論をすべきだったのではないか、とか。変異種の脅威は警告されていたのに、なぜ素通りだったのか、なぜ水際対策を強化しなかったのか、とか。

オリンピック前から変異種は入ってきていたし感染拡大も始まっていたのに、オリンピックばかりを批判し続ける盲目的な姿勢をジャーナリストのような立派な肩書を持った人が取らないでほしい。世論を先導する力があるのに愚かな真似をしないでほしい。反国家権力の姿勢を貫くのは良いが、せめてもう少し理知的にやってほしい。

私達は私達のオピニオンリーダーがその役割を十分に果たせない可能性があることをもっと知るべきである。

憲法とコロナ

このニュース、大変痛ましい話で、こういう真面目な人が報われない世はむなしい。

このニュースは「一般には厳しい水際対策を敷いてるのに五輪関係者に対してだけ甘いのはおかしい」という内容だが、誤解を招くおそれがあると思うので不備を指摘しておきたい。

このニュースにある通り日本の水際対策は一見厳しいように見える。しかし実際には機能していない。

入国後の待機を守らない人が一日に300人以上いる日もあるとのこと。


五輪関係者とそれ以外で対応に一貫性がないのは確かだ。それは責められても仕方ない。私が指摘したいのは「五輪関係者以外に対しても厳しい水際対策なんて実施されていない」こと。この事実は皆が知っておくべきだと思う。

今年四月に外国人が1万7,500人も入国して、そのうちインドから700人も入国していたなんて皆さんご存じだっただろうか。すでに日本にはデルタ株が流入している。五輪以前の段階で、こういうところから入ってきているのである。

隔離の監視対象者が一日に2万人以上いるなんて知っていただろうか。そして日本の水際対策が「要請」に過ぎず罰則もないために、多くの入国者が隔離から逃れていたことを知っていただろうか。

上のデイリー新潮の記事には厚労省の話として次のような記述がある。

「確かにイタチごっこになっている現状があります。1日あたりの監視対象が約2万人で、それを監視するスタッフは約300人。監視する業務がどんどん増えていき、追いついていない。今も1日あたり100人くらいの違反者がいます。ただし、憲法で『移動の自由』が保障されている以上、罰則を負わせることが難しいのです。国内で感染した人にも自宅待機を強制していないのに、陰性証明書を持って入国時に陰性だった人に対してだけ強制できるのか、という議論もあります」


こういう根本的な問題を修正しないことには有効な水際対策なんてこれからもずっと実施できないままだと思うが、新聞テレビは驚くほどこの問題に突っ込まない。この問題は今回の新型コロナだけにとどまらず、次に発生する感染症へ我々がどう対応していくのかの問題でもある。

感染症を抑えるために市民の権利を制限するところまでやるのか、それとも感染症の完全抑止は諦め自由を重んじ憲法にまでは踏み込まないようにするのか。

感染症は絶対抑えろ、でも自由は侵害するな」

は実現できない。子供でも分かる。人が交流すると感染が広まるのだから。感染症を抑えるには社会行動を制限せざるを得ない。

次にもっと脅威度の高い感染症が襲ってきた時に、現在の「緊急事態宣言」で対応できるだろうか。現状ではそれほど人出が減っていないという情報もある。「まともな政府に代われば国民は言うことを聞いてくれる」のだろうか?

いずれにしてもこれは我々が議論して決めなければならないことだ。このままでいいのか、変えなければならないのか。自由が至上なのか、安全が最優先なのか。様々な視点から分析された幅広い情報を元に我々が議論して、多くの人が納得できる妥協点を探さなければならない。

新聞やテレビ、ジャーナリストはそのために必要となる。私たちを本質的な議論に導き、幅広い視野、たくさんの視点を提供するのが彼らオピニオンリーダーの仕事だと私は思う。

直前でのオリンピック中止を訴える政治感覚

感染拡大が怖いからオリンピック中止してくれ、と市民の間から声が上がるのは理解できる。でも大物政治家が同じこと言うのはほんとに勘弁してほしい。

 

世界中で蓄積されたデータから読み取れる新型コロナの実際の脅威度、これまでの日本の感染状況、現在のワクチン接種率、医療崩壊を防ぐために打てる、まだ実施されていない政策(指定感染症レベルの変更)。こういう現状を把握できていないのだとしたら論外だが、把握した上で「オリンピック中止により日本が被る様々な不利益*」までを計算に入れて、なお「五輪中止が最善」と結論してしまうのなら、その人は政治家に向いていない。ジャーナリストになった方がいい。

 

トランプ批判でよく聞いた言葉だけど、今は科学の時代だから。科学に基づいた合理的な判断が求められるわけだ。「オリンピック関係者が驚異の新型変異株を持ち込み、感染力、毒性ともに最大級でモデルナビオンテックもお手上げの変異ウイルスが日本人の大半を死に至らしめる」みたいなリスクを過大に見積もった根拠薄弱な当て推量に依拠した政策決定は許されない。もちろんこのシナリオになる可能性もゼロではないが決して妥当な推測ではない。

現代では世界大戦こそしていないが国際間競争は常に存在している。日本が「明日空が落ちてきてらどうしよう・・」とうろたえている間に他国は先に行って豊かになってしまう。命が助かればそれでいいじゃないか、と言っている間に出し抜かれ、果ては命を繋ぐための資源を失うことになるかもしれない。

逆に言えば、今回日本は新型コロナに感染しにくく重症化しにくいというアドバンテージを持っていたから、他国を出し抜くチャンスがあったはずなのだが、まったく活かせなかった。こういう話をすると命を人質に取られてしまうから日本ではまだ難しいのだろうね。

 

*金銭的なものにとどまらない。選手の落胆、失望。国際的な地位の低下。「なぜ野球やサッカーを観客入れて実施しているのに五輪はだめなのか」「ワクチン接種義務もない月5万の入国者を許容している現状でなぜ五輪関係者だけを警戒するのか」「日本は国政レベルで二重基準を採用する非合理的な国」

他国の理解が得られない状況で五輪中止を決定すれば、日本の信用は低下し、今後国際的な場での役割を制限されるおそれも。イベント招致はできなくなりそう。

斎藤アナのコロナ感染と甲子園出場辞退

モーニングショーに出演しているアナウンサーが新型コロナに感染した。39度の熱まで出たというから無症状陽性者とはわけが違う。それなのに共演者は感染を疑われることもなく番組は平常運転を続けているというのだからおそろしい。感染者が同じスタジオでマスクもせずにしゃべり続けていたのに。

でも一番恐ろしいのは今までやってきた「コロナは怖い」がウソだったこと。

本当に怖い感染症と彼らが信じているなら同じスタジオにいた関係者はすべて自主隔離に入って症状が出た時に備えて安静にするはず。濃厚接触が疑われる人が市中をうろついたら感染を広める可能性があるから出社してくるなんて論外だ。でも実際は通常営業。彼らは自分達が煽っているほどには新型コロナを恐れていない。そもそもマスクすらしてないし。

 

新型コロナを最も警戒して、我々に対しては自粛を要求し続けていた人達がこの程度の認識なわけだから、市井の人々があれこれ心配してイベント取りやめたりする必要性はまったくない。

部員に陽性者が出たから甲子園辞退なんて話が出ているが、データを見ると高校生は新型コロナに対して最強の抵抗性を持つ年代なわけだし、感染発覚即辞退なんてことはやめてほしい。これまでずっとバランスを欠いた情報を流し続け、1年以上我々に自粛を強いてきた人達がこれなんだし。もっとフレキシブルにいこう。

五輪以前に現状の入国者数は気にしないの?

コロナ問題でオリンピックばかりが争点になってしまってマスコミの力は本当にすごい。

感染症対策で大切なのはまず水際だろう。
オリンピックをやろうがやるまいが、日本は現状でも月間数万人の入国者がいる状況である。2021年4月は5万人。そのうち外国人は17,558人。

www.e-stat.go.jpこの数字を見て驚く人は多いと思う。
現状でも月間数万の人が海外から入ってきているこの事実を一体どれだけの人が知っていただろう。この数字を知っていたら議論の争点もおのずと変わっていたのではないだろうか。


「オリンピックで変異種が入ってくる」と騒いでいるが日本にはすでに変異種が入っているのだ。感染者の強制隔離もできないザル管理体制でこれだけ入国させていれば当然だろう。

 

しかし不思議なのはウイルスの変異による弱毒化の可能性には一切触れず、ひたすら「変異種こわい」をやってきたテレビ新聞が「変異種を招き入れてしまった日本の水際対策不備」を大して叩かなかったことだ。この不備が見逃されたままならオリンピックをやろうがやるまいが今後も変異種が流入し続けるだろう。なぜ彼らは本質的な問題である水際対策の話題を避けて、五輪を標的にし続けるのか。

 

おそらく水際対策を追求すると、人権、憲法、の問題にぶつかるからあまり触れたくないのだと思う。しかしここを改善しないと、今回のウイルスはまだ症状が軽い方だから「瀬戸際」を4、5回迎えただけで済んでいるが、次、SARS、MERS級が発生した際に為す術なくやられてしまう。

 

命に直結する重要な情報を伝えようとしないテレビ新聞を「オピニオンリーダー」の地位に置いたままで私達の生活は守られるだろうか。

これがジャーナリズムなんだ

新聞はすごい。まずこの記事。

無観客が決定する前、自分達が何を言っていたのか忘れてしまったのだろうか。いくらなんでも節操なさすぎだと思うが、記者もこれが仕事だから仕方ない。みんな生活があるしお金は稼ぎたいからね。だから記者を責めてはいけない。


大切なのはこれがジャーナリズムなんだとみんなが知ること。

 

みんなジャーナリストに公平な視点というのを求めがちだけど、それは根本的に間違っている。ニュースを偏りない視点で伝えることなどできないし、彼らもそんなことするつもりはない。そもそも何を取り上げて何を取り上げないのか、情報の生殺与奪が彼らに握られている時点で公平さなど期待できないと分かるだろう。

 

彼らには彼らの生活があり、彼らの信じる正義がある。正義のためなら敵を討つし、生活がかかるなら道理も曲げよう。彼らも普通に生きる普通の人間だ。まぁ普通の人はなかなかここまで振り切れないけど。

 

公平性などと言って変に報道を神聖視せず、政党や宗教と同じ特定の目的・志向を持った集団だと認識すれば、そこから提供される情報への接し方も分かるというもの。

 

日本は国民の新聞雑誌テレビへの信頼度が他国に比べて高いという。

ジャーナリストは必要な存在だから報道を規制するような方向に進んではいけないけれど、こういう不誠実な報道を平気でしてくるわけだから、私達も他国並に冷めた目でマスコミを見なければいけないと思うよ。

大越さん

政権に批判的だったような印象はないんだけど、というか有馬さんも含めてNHKのキャスターからそういう感じを受けることはなかったんだけど。この業界で生きているのだから当然反権力的な姿勢は持ってるだろうけどニュースでは色は出さないようにするよね。出たとしても感じ取ろうとすれば感じ取れる程度なのでは。二人とも爽やかでいい感じだった。

 

大越さんはニュース9だったかで多分政治汚職かなんかのニュースだったと思うけど、最後にやや憤慨しながら「私たちの税金を・・・きちんと使ってほしいですね」的なコメントをしていたのが印象に残っている。私はそれを聞いて「あ、税金使ってる側の意識ないんだ」と思った。受信料は納める側からすれば税金と同じ。NHKの人も「自分達は公務員」的な意識を持っているものだと思っていた。

 

NHKの人達は受信料をどう思っているのだろう。受信料の徴収に年間何百億円も掛けている事実をどう思っているのだろう。汚れ仕事を外部に委託しているのを変だと思わないのだろうか。

私だったらこういう組織に所属しながら他者批判は恐ろしくてできない。批判がそのまま自分に返ってくると分かるから。もちろんジャーナリストが権力批判できないようでは問題だから私の方が間違っている。

 

しかし少し省みてほしいとは思う。もしかしたら自分達はすごくおかしな組織に所属しているのではないか、もしかしたら自分達の給料は真っ当ではない方法で集められた金なのではないか、そんな自分達が正義を説いたら聴衆が白けるんじゃないだろうか。